赤ん坊

砂糖粒より小さかった生命の卵は、細胞分裂を繰り返し、ゆっくりとヒトに近づきつつある。

赤ん坊は私のお腹で成長を続け、5ヶ月と2週間程が過ぎた。

初期の頃のエコーに映るベコベコと激しく脈打つまが玉のような生命の塊には、思わず胸がドキドキした。

それから徐々に大きくなっていく赤ん坊の様子をエコーで見るたびに、専門医の説明なしにはどの部分がどうなっているのか解りづらくなり、「ほらー。足がこっちで、これが頭。あ、今手が動いてる。ほらー。ずぅっと見てられるね。」と、煽り気味の担当医の解説を真面目に聞いていても、画像を手渡された後に1人で見返してみても、やっぱりよくわからない。

エコーってグロい。

普段、私の通う病院のエコーは白黒の2D画像で、背骨と思しきものがマラマラと並んだ様子や、手や足の関節なんかが映る、所謂スケルトン的なものだ。

勿論、より見やすい4Dエコーなるものも、予約をすれば有料で診てくれる。

この4Dなるもの、大変感動的なのだそうで、天井をスクリーンに大きくかつきれいに映し出される赤ん坊には涙するのだとか。担当医のお勧め。

だけど、今のところ4Dエコーの予約はしていない。

無論、赤ん坊には早く会いたいし、4Dエコーを予約する親達と同じように、私は赤ん坊を愛おしく思っている。

私は高齢出産にあたる、36歳である。

妊娠が確定した当初からその事実を否でも応でも意識させられる。

世間一般の線引きで、35歳からそう呼ばれる。なので、「わーい。赤ん坊が出来た。」と、喜びもそこそこに大変不安になった。

高齢出産のリスクは様々で、出生前の検査をして赤ん坊の疾患が分かるものや、流産のリスクを背負ってまでの検査まである。

 

私の親世代に比べると、検査を積極的に受ける親は増え、検査の精度は向上し、出生前の疾患、特に染色体異常の確率しか分からないとは言え、それによって出産を断念してしまう親も多いのだとか。

それぞれに色々な意見や考えをもつ親がいて、当然どの考えも尊重されるべきものだと思っている。

この検査は自由診療のため、費用は全て自己負担になるらしいが、もし将来的に、もっと金銭的に手軽に受けられる検査になってしまえば、みんな検査するんだろうか?そして、これもやっぱり自己責任だと非難されたり、あからさまでなくとも、心の中でこっそりと思われたりするのだろうか?

出生前に診断できるのに、何故検査しないの?

私は、4Dエコーに続いて、この出生前診断も今のところ検査は予定していない。

でも、上記したように言われたり、ひっそり思われたりするのは悲しいな、大多数がそういう考えをしてしまう世の中は嫌だな、切ないな、と思う。